分散型エネルギー普及策

No.10 新エネ発電法の問題点 2003・2・5

  <新エネ発電法は本当に自然エネルギー促進につながるか?>

  平成14年6月7日に「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(「新エネ発電法」と略します)が成立しました。今年の4月から施行されます。

 この法律は、電力会社の発電量(自社での発電分でも、他社からの買い上げでもOK)のうち、一定割合を新エネルギー等からまかないなさい、というものです。

 EU諸国の再生可能(自然)エネルギーの定義と、政府の新エネルギーの定義とはちょっとだけ違いがあります。この法律で定義する新エネルギーというのは、

@風力
A太陽光
B地熱
C政令で定める小水力
Dバイオマス
Eその他、石油を熱源とする熱以外のエネルギーであって、政令で定めるもの

となっています。

 この法律ができるときに環境NPOがこぞって反対したのはEのなかに廃棄物発電が含まれる→この法律は自然エネルギー促進というより、ゴミ発電促進法になってしまう、という懸念があったからです。

 電力会社側に新エネルギーからの発電を義務づけられると、当然、なるべく安い電源で調達したくなります。現在のところ、太陽光は46〜66円、風力10〜24円、廃棄物発電9〜12円、廃プラ発電5円(推定)です。一番安い火力発電の発電原価7.3円より廃プラ発電は安いのです。

 廃プラ発電というのは、分別収集されたプラスチックを石油火力のかわりに使う方式です。廃プラはカロリーが高く、高効率の発電ができます。石油代替になるといいますが、そもそもプラスチックは石油から作られた製品です。廃プラはリサイクルしても売れない。だから石油火力のかわりに使う。これでは本末転倒になってしまいます。

 PETボトルや雑多なプラスチック類はリデュースをするのが大前提なのに、便利なのでいっぱい作ってしまった。でも、リサイクルしても売れないから、石油火力発電のかわりにつかうという政策はヘンです。

 と、悪口ばかり書きましたが、反対の意見が強いこともあって廃プラ発電などの産業廃棄物発電はEから除外する方針を固めています。(2002年11月18日)本来推進すべき風力や太陽光、バイオマス推進のための法律にする必要があります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 もうひとつの問題点はこの新エネ発電法では新エネルギー間での競争が厳しくなるという点です。よく比較されるドイツでは固定買取制度を採用していて、発電された自然エネルギーは全量、固定価格で電力会社が買い取ってくれることになっています。

 自然エネルギー間の競争が厳しくなると、例えば市民発電でみんなが出資して作ったような太陽光発電は淘汰される可能性があります。現在、太陽光発電の余剰電力は電力会社の負担(発電原価ではなく、売価の20数円で買い取っています)において全量買い取ってくれる制度になっています。これは法的根拠がある制度ではなく、電力会社の好意でやっている制度です。

 競争がより厳しくなるとこの買取制度が生き残っていけるかどうか不明です。

 個人的にはドイツ型の自然エネルギーを全量保護する制度ではなく、競争のなかで自然エネルギーも自立できる方が望ましいと思っています。そのためには、化石燃料が安すぎるのが最大の問題点です。この価格差を補うためには炭素税を課税するしかない、エネルギー税制を改正することが大前提だと考えています。

<< 前へ ==== 次へ >>

「分散型エネルギー普及策」の目次へ戻る