分散型エネルギー普及策
No.11 バイオマス・ニッポン 日本再生に向けて 2003・5・22
2002年7月に内閣府・農林水産省・文部科学省・経済産業省・国土交通省・環境省の1府5省が合同で(これは縦割り行政のニッポンでは画期的らしいです)、バイオマス・ニッポン総合戦略骨子をまとめました。
http://www.maff.go.jp/biomass/index.htm
@地球温暖化の防止、A循環型社会の形成、B農山漁村に存するバイオマスの利用、C新規産業創出の観点から、まず、廃棄物系バイオマスの利用、そして、未利用廃棄物の利用をすすめています。
現代語のバイオマスの定義は「燃料・原料として利用できる生物活動に伴って生産される有機物」ですが、昔は炭焼きやたきぎとして利用されてきたわけですし、現在でも世界全体ではエネルギー資源として第4位、世界のエネルギー必要量の14%を供給しています。
それが、なぜ今バイオマスかというと、バイオマスは大気中のCO2を吸収固定するので、地球規模でCO2バランスをくずさないカーボン・ニュートラルな資源、そして、光と水によって再生可能な無限エネルギーだからです。バイオマスを燃やすと炭酸ガスが発生するので、なんでカーボンニュートラルなのか、頭をひねりそうですが、植物の成長過程で逆に吸収するので京都議定書等でカーボンニュートラルと定義されたそうです。
建設廃材や食品廃棄物、製紙残さ、家畜廃棄物など廃棄物系バイオマスの量は十分あります。間伐材・被害木を含む林地残材のほとんどは未利用です。このように廃棄物系・未利用バイオマスの量はともに十分あるのですが、「広く、薄く」存在している上、水分含有量が多い、かさばる、という欠点があります。
効率の高い変換技術の開発が不十分ということもあって、化石燃料と比べて経済的には不利です。 たとえば、建設廃材の6割は未利用です。2002年5月30日から建設リサイクル法が本格施工され、コンクリート・アスファルト・木くずの3種類(建設廃材の80%を占めます)は分別解体、再資源化が義務づけられました。
ところが家屋の基礎部分にはシロアリ駆除目的で砒素・クロム・銅を使ったCCA処理が行われています。CCAを含んだ建設廃材が今後20年程度は排出されるとみられていますが、家屋の解体はミンチ解体が主流なので現場での正確な分別は難しいです。これらを燃焼してバイオマス発電として熱利用すると有害物質が排出されることになります。
廃棄物系バイオマスの利用方法としてマテリアル利用とエネルギー利用があります。マテリアル利用として原材料・製品としての利用をすすめないことには循環型社会にはなりません。ですが、リサイクル製品はかえって値段が高くなる、質も落ちる、販路が限られていることもあってエネルギー利用に傾きがちです。
リサイクルを繰り返すとどうしても質が落ちてくるのでサーマルをも視野に入れたカスケード利用(より有効利用のための段階的利用)も必要ですが、あくまでリデュース・リユースにむすびつくようなマテリアル利用をメインにすべきだと思います。
廃棄物系バイオマス(建築廃材や製紙残さ)はエネルギー利用を考えざるをえないのですが、ガス化発電やメタノールの合成(燃料電池にも使えます)、スラリー燃料化(炭化バイオマスが水に懸濁した状態、液体塩嶺としての利用ができます)、石炭火力発電での化石燃料とバイオマスの混焼など、バイオマスの非効率性を補う用法によって使いやすい二次エネルギーに転換する必要があります。
以上は「バイオマス・ニッポン 日本再生に向けて」小宮山宏・迫田章義・松村幸彦編著(日本工業新聞社)を参考にして考えた私見です。松村先生は2003年2月9日の「バイオマス講演会」の講師をしてもらったセンセーです。とてもフレンドリーな先生でした。