分散型エネルギー普及策
No.12 木質バイオマスを燃料に 〜西条火力発電所で試験開始〜 2003・7・8
電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法はあまりに長い法律名なので、新エネルギー利用法とかRPS法とか呼ばれています。2002年6月に成立して、2003年の4月から施行されました。電気事業者に一定量の自然エネルギー発電利用を義務づける法律で、2010年度に新エネルギーを1.35%まで引き上げることを目指します。
で、新エネルギーの利用に関しては自ら発電してもいいし、他の発電事業者から発電量を購入してもOKというものです。他の発電事業者から購入するシステムがRenewable
Portfolio Standards(再生可能エネルギー導入基準制度)と呼ばれるグリーン証書制度なのでRPS法とも呼ばれます。
自然エネルギーといえば風力、太陽光を思い浮かべますが太陽光発電は火力発電に比べると随分高い(住宅用で1kWhあたり46円〜66円)。風力発電は10円〜24円と経済性は随分よくなってきましたが、風力発電に適した場所は東日本に偏在している(大規模ウィンドファームは東北・北海道に建設されています)という事情から、各地域の電力会社の実情を考慮して設けられたのがRPS制度で、これを取り入れた法律が新エネルギー利用法です。
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西日本は風力に適した土地が少ない。でも、2010年には全販売量の1.35%は新エネルギーでまかなう必要があります。そこで注目されるのがバイオマスです。廃棄物系バイオマス、未利用バイオマスなど利用可能性のあるバイオマスは量的には十分あります。でも、広く・薄く存在するため輸送費がかさむ、バイオマス単独では発電効率が悪いなどという問題があります。
先日、6月18日に愛媛県西条市にある西条火力発電所(石炭火力発電所)で木質バイオマスを用いた火力発電の試験が公開されました。テレビの情報番組で知りましたが、これはけっこう画期的なことです。
石炭火力発電所は化石燃料のなかでも最もCO2排出量が多く、温暖化防止の観点からは望ましい発電方式ではありません。カーボンニュートラルのバイオマスは温暖化防止の観点からは望ましいエネルギー源ですが、発電効率は悪いし、バイオマス燃料の輸送費がかさむ。補助金を受けてバイオマス発電所を作っても施設の償却がペイするには40年も50年もかかるというのが現状のようです。
ところが、この実証実験は石炭との合計量の1〜3%の割合のバイオマス燃料(製材過程で発生した樹皮など)を混入、燃焼させるものです。既存発電所を使うので新たな発電所の建設は必要ないし、石炭火力発電に混合することでバイオマス燃料の燃焼効率の悪さをカバーすることができます。
これまでの火力発電施設を使うので、@石炭を微細に粉砕する設備で(石炭ほど微細でない)木材の粉砕が可能か、A既設ボイラーで効率燃焼が可能か、B排ガスなど環境への影響はないか、が問題点だったそうですが、「すべて問題はない」そうです。
取らぬたぬきの皮算用(別名;同発電所試算)では、年間1.3万トンの燃焼用木材の調達が可能で、すべてを発電に用いた場合には年間で0.5万トンの石炭使用量を減らせるそうです。ただし、木材の調達費用は実証実験の段階で石炭の約6倍だそうです。
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楽観論ではありますが、再生可能エネルギー普及の技術面の壁は、遅かれ早かれ、全てクリアできるだろうと思います。本当の壁は経済性でしょう。ペットボトルにしろ、火力発電所にしろ、ガソリン車にしろ代替品はできますが、経済的にはどうしても「湯水の如く使える石油製品」に比肩できません。
あと半世紀もして本当に石油が枯渇する時代になると自然エネルギー、脱石油製品に移行せざるをえないのでしょうが、もっと早く、温暖化の影響が顕著になるまえに脱化石燃料を促す政策を望みたいものです。
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