分散型エネルギー普及策
No.16 新エネルギー等の利用に関する特別措置法 「環境価値」を販売する? 2004・4・22
<この菜の花も新エネパワーになるかな?>
「電気事業者による新エネルギーの利用に関する特別措置法」という長ったらしい名 前の、でも条文は17条しかない法律が去年の4月から施行されました。あまりに長い 名前なので「新エネ促進法」とか「RPS法」(「RPS」という経済的手法を使っ た法律なので)とか呼ばれている法律です。
この法律の目的はなかなか普及が進まない自然エネルギーの普及を促すところにあり ます。そのために、電気事業者(各地の電力会社や新規参入者)は他の業者から買電 してもいいし、自ら発電してもいいけど、2010年には総発電量の1.35%は自然エネル ギーでまかないなさいよ、という法律です。突然、「1.35%までは自然エネルギー で」といわれても困るので徐々に義務量が増えることになっています。
1.35%という のは2003年度の約4倍の義務量です。 施行から一年経過しました。新エネの発電が大いに促進されているのでしょうか?
いま、各地に風力発電サイトやバイオマス発電所が建設されています。とりあえず、 各電力会社は新エネ発電を義務づけられたのですから、自ら発電出来ない場合は、義 務量は必ず他の自然エネルギーを買電する必要があります。商機ありとみた企業が一 斉になだれこんでいる状況のようです。
現在のところ、風力やバイオマスは1キロワット時あたり10円程度で電力会社に販 売しています。10円という値段は火力の7円程度よりは高いですが、太陽光の50円 程度に比べると随分安くなりました。十分競争可能ともいえるし、風力に限界が見え てきたので一斉にバイオマス発電に走ったともいえます。
新エネ発電の定義(第2条)に含まれるのは@風力、A太陽光、B地熱、C小規模水 力、Dバイオマス、です(第6号は省略)。
新築の家屋の屋根にはAの太陽光発電のパネルを設置しているところも多く、個人的 には一番利用しやすいのですが発電コストが50円程度なので利用拡大は難しいとこ ろです。
東北日本を中心にかなり設置されてきている風力発電は、立地場所の選定が難しい (風が強すぎてもいけない・弱すぎてもいけないという基準で選んだ場所が国立公園 地域内だったり、野鳥に被害を及ぼすおそれがあったり・・)。そのうえ、「送電網 の安定」なんていう技術的な限界をいわれると「う〜ん」とうなってしまいそうです。
言葉とおり「風まかせ」の風力発電は出力が不安定です(ここまでは素人にも分かる)。 規模が大きくなると周波数や電圧変動を引き起こす可能性があります(物理は全て大 嫌いだったので理解不能ですが、たぶん、そうでしょう^^;)
実際のところ、風力に適している北海道の電力会社では、受け入れを25万キロワット に制限しています。ですから、今後、北海道で風力発電サイトを建設する事業者は北 海道電力以外の電力界者に売電する必要があります。
「長期エネルギー需給見通し」による2010年度の風力発電は300万キロワットが目標 です(現在の4倍)。そのためには送配電網の強化が必要で、その費用は最大5500億 円ともいわれています。電力自由化というコスト削減・新規投資逃げ腰の時代に「こ れらの費用を誰が負担するのか?」という大きな問題もあります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ドイツの再生可能エネルギー普及政策は各自然エネルギーごとに買取価格を決めて、 自然エネルギー発電は必ず買い取らなければならない施策にしています。このドイツ
型の買取義務と違って、日本の政策はRPS制度という競争が働くシステムにしています。
RPS制度はなかなか理解しにくい方法ですが、電気を「電気」部分と「環境価値」 部分に分けて販売する方法です。新エネの種類や発電業者によって発電価格は異なっ てきます。
ですから、
@ドイツ型の全量買取制度に比べて自然エネルギー発電間の競争が進みやすい。
A電力会社は割り当てられた量を満たすための「環境価値」部分だけを買って、「電気」 は自ら安く発電する、または、他の事業者から安い「電気」を買うことができるとい
うシステムです。
「電気」部分と「環境価値」部分の両方を合わせたのが自然エネルギー発電収入です ですから、「電気」部分だけ買いとってもらっても、「環境価値」部分だけを買いと ってもらっても困ることになります(その分、回収できないことになるので)。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この法律は施行後3年を経過し、必要があると認めるときは検討を加えることになっ ています。1年が経過しました。あと2年です。果たして自然エネルギーが現在量の
4倍強までこの法律によって促進されるか注目したいと思います。