分散型エネルギー普及策
No.17 環境税〜地方の産廃税、国の炭素税〜2004・5・6
ちょっとカタイ話になりますが、森信茂樹氏(たぶん現東京税関長、元大蔵省勤務、
前大阪大学教授)の書かれた「日本が生まれ変わる税制改革」(中公新書、2003年 )はなかなか面白い本です。
数年前に「二元的所得税理論」が注目された頃、『「日本型二元的所得税」の提案と
課題』という論文(税理2002年6月号)を読んで面白いなって思っていました。 <二元的所得税というのは1990年代はじめ、北欧で環境税の導入と共に導入された制
度で資本所得(金融資産や不動産所得など)を勤労所得と別にして、勤労所得の税率 より低い税率を適用するものです>。
「たかがお金、されどお金」と財務的視点重視の立場にたつワタクシとしましては、
税金の問題抜きに構造改革も規制緩和も地方分権もない、税制改革抜きに真の改革は ないと思っていますが、税金に興味をもっている人は少ないですね。
日本のサラリーマンの大部分は年末調整で一年間の税額が決まってしまう、その手
続きも会社がやってくれるので自分の払っている税金がいくらか、知らない人が大 部分でしょう。
余談ですが、この給与所得者に対する源泉徴収制度は昭和15年に戦費を調達するた
めに始められたシステムです。60年以上も続いているのですから、日本人の体質に 合っていたのか、いまだに「全ての人が確定申告をする制度にかえて、納税者番号制
の導入をする。これらによって税制について当事者意識をもってください!」という 意見には反対の人が多いですね。
でも、国家権力によって有無をいわせず、反対給付を期待できずに強制的に徴収さ
れるのが税金です。税金について、税制についての理解を深めないことには年金の 問題も、将来世代に対する責任論も全て机上の空論になってしまいます。
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と前置きばかり長くなってしまいましたが(^^;)、森信氏の書かかれていることに 「地方分権と税制」「環境問題と税制」という項目があります。 いまのように国税として税金の7割を集めて、それらの税金を補助金・地方交付金
として地方に分配する制度(はは〜、地方役人よ。心して受け取れ〜ってところ)はヘ ンです。地方分権は自主財源が豊富じゃないと、実現できません。
また、国税として環境税を導入するという問題は道路特定財源に手をつけないことに
は大して効果がない、単なる増税に終わってしまうという議論に大賛成です。 「カンキョーゼイ、カンキョウーゼイ」と環境省や経済産業省が炭素税(温暖化対策
税)の導入をほのめかし、そして法定外目的税を作りやすくなった地方自治体が産廃税 や水保全環境税など新税の導入を検討しています。
それでなくても「消費税の総額表示は消費税率アップへの布石か?」と疑心暗鬼にな
っているわれわれ庶民は、国でも地方でもまた新税を作って増税しようとしているの か、と疑いたくもなります。
まず、炭素税の役割は「税金の固まりになっていてもいまなお安い化石燃料の価格」
を人為的に高くして、エネルギー源の転換を図ることです。ガソリンや軽油は既に税 金の固まりになっている→ところに問題があります。
道路特定税源になっているガソリン税などは暫定税率が延長され続けています。道
路民営化でも抵抗しきれなかった「道路族」の財務的基盤をどうやったら取り崩せ るか、理論上オカシイことは言われ尽くしているのだから、後は政治力でしょうか?
もうひとつ重要なことはエネルギー問題(発電所の話)です。いまの電気は火力発電
所と原子力発電所から供給される電力が大部分です。原子力に反対の人は多いけど、 原子力は化石燃料じゃないので炭素税を導入することは「原子力重視か?」なんて反
対意見が出たりします。
わたしたちの生活は電気なくしては成り立たなくなっています。化石燃料、原子力、
自然エネルギー、これらの生活に欠くことのできない問題は専門家ばかりでなく一般 の人も参加して「どういうエネルギーの将来像が望ましいのか」話し合っていく必要
があります。
そして、三重県が言い出しっぺ、いま20県近くで導入済み、または導入が検討され
ている産廃税ですが、これは基本的には最終処理業者(産廃の受入処分場を所有して いる業者さん)が産廃税を処理費に転嫁できるような方法で導入してもいいと思います。
法定外目的税なので一般財源に組み入れられることはありません。「基金」と呼ばれ
る地方の特別会計に組み入れられます。
せっかく、産廃の最終処分量を減らすことを目標に課税するのだから税収はしみっ
たれた使い方ではなくて(1件100万円くらいの補助金に回すところが多い)、例え ば現行では経済性が悪い、でも、林業の振興にも木質廃棄物の処理にも望ましい「バ
イオマス発電」やガソリンの代わりにつかう植物からの「エタノールの製造施設」な どに使って欲しいものです。
失敗例のおおい補助金による「エコタウン計画」よりずっと望ましいと思いますが、
いかがですか?
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