経済的インセンティブ
No.12 産廃税 その2〜あちこちで産廃税導入 その問題点〜2003・8・29
ちょうど一年前にも同じように産廃税のことを書いていました。香川県では来年の県議会での条例の制定をめざしているようで新税制懇話会が設けられました。政府の審議会の地方版のようなものです。わたしも委員のひとりです。その第1回の部会が一昨日に開催されました。
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地方分権一括法という法律が2000年4月から施行されて、地方自治もだいぶ変わりました。「機関委任事務」という知事や市町村長に国の事務を代行させる事務(これが都道府県の事務の約8割、市町村の事務の約4割を占めています)が廃止されました。これは戦前から続く制度で中央集権型行政システムの中核を形成していたものです。
そして、「自己決定は地方分権の基本」ということで、自治体の独自課税が導入しやすくなりました。使途を限った「法定外目的税」が創設され、使途を制限しない「法定外普通税」も国の許可制から事前協議制に切り替わりました。
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と、前置きが長くなりましたが、これが最近あちこちで導入されている産業廃棄物導入ブームの原因です。トップを切って導入した三重県をはじめ、すでに12県で導入されたり、導入が決定されたりしています。
産廃税は地方税法に定めがなく、自治体が独自に条例を設けて課税する「法定外目的税」にあたります。最終処分場に持ち込む業者に1トンあたり1000円程度の産廃税を課し、税収は産廃の減量やリサイクル費用などに充てます。
補助金が減額されたり、不況の影響で税収が減ったりと地方の財政は厳しい状況にあります。そして、産廃の最終処分場の新規建設は難しく、産廃税の「税収確保」と「ごみの減量」の一石二鳥を狙った試みです。
ところが産廃税にはこれらのもくろみからみると、困った点があるのです。
まず、税収確保のために産廃税を導入するのに、産廃税の目的が達成されると税収は減っていく運命になるのです。そもそも、産廃税というのは最終処分の価格を高くすることによって、発生抑制をねらうインセンティブ効果をねらった税です。業者はその税額分を処理費用に転嫁する。その効果によって最終処分量を減らそうというのが目的の税ですから、課税目的が達成されると税収は限りなくゼロに近づいてしまう。一種の環境税です。
全国で初めて産廃税を導入した三重県でも見込みを大きく下回り、4億円の見込額が実際には1億2580万円しかなく、税収転用をあてこんでいた不法投棄の監視費用は一般財源から捻出することになりました。
二番目の問題点は目的税ということです。一般財源に入れることができないので、<受益と負担>という税の基本点で目的と手段がかみあわないおそれがあります。だんだん税収が減ってくるであろう種類の目的税の用途が限られてしまうのでは、国のエネルギー関連の特別会計と同じになってしまうおそれがあります。(使用目的が限られているので電源開発促進税を税源とする電特会計などは余ったままです)。
きちんと最終処分している業者に対しては課税をして、不法投棄をしている業者からは税金を取れない問題点もあります。
法定外目的税として導入する限りは「税収の使い道」が一番の問題です。
「財源調達目的」ではなく、「ゴミを減らす必要性」から導入するのですから、最終処分量を減らせるために利用する必要があります。一般的には「リサイクル目的」ということになりますが、リサイクルではエネルギーの使用量はたいして減りません。
やはり、「循環型社会形成推進基本法」にいうところの大原則<発生抑制><再使用>のために使ってもらいたいものです。現在、リサイクルはかなり進んでいますが、<発生抑制>元から断たないとエネルギーの無駄を続けるばかりなのですから。
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