経済的インセンティブ
No.7 炭素税の経済への影響・家計への影響
経団連は炭素税の導入に反対し、あくまで自主的取組にこだわっています。経済産業省(産構審)も自主的取り組みを尊重し、現在の施策の充実・強化を主張しています。環境省(中環審)は温暖化対策税を検討するとなっています(実際の答申は検討中の文言だけでしたが)。
産業界は強い。各種経済団体が経済産業省に対する圧力団体になっているんでしょう。環境省に対する圧力団体は環境市民団体くらいでしょうか?
企業が炭素税の導入に反対するのは、エネルギー価格の上昇による国際競争力への影響を懸念してのことです。炭素税が競争力に及ぼす影響については各種シミュレーションがあります。2010年時点で年間0.06%〜0.72%と推計され、炭素税や環境規制の差違が貿易や投資に与える影響は比較的軽微との結果が得られていますが、エネルギー多消費型産業に対しては影響が大きく、鉄鋼業は11.2%減、製紙業が約7.6%減となっています。これらの産業に対しては減免措置をとればいいのであって、イギリスのように排出量取引との組み合わせ等も考えられます。そのためには大規模工場の排出量の把握や公表、あるいは産業界別の割り当てを決めることも必要だと思います。
国内レベルで考えると炭素税は個別消費税ですから、最終消費者に負担が転嫁されるはずです(転嫁の理論はいろいろありますが少なくとも一部は転嫁できるはず)。ですから消費税と同様に低所得者層の方が負担が大きくなってしまいます。逆進性の解消が必要になります。
日本は課税最低限が高いので所得税の減税では恩恵が及ばない。欧米のように社会保険料負担の軽減はシステムがちがうのでできない。となると消費課税の中で減税すべきだと思います。
1991年のスウェーデンの炭素税の導入を含む税制改革では@付加価値税の課税標準の拡大、A累進所得税の減税、B資本所得課税の統一税率化、C所得税の減税を補うための付加価値税の税率引き上げが行われました。
いま、税制改革議論で努力に報われる税制をということが盛んに吹聴されています。所得税のフラット化、消費課税の拡大は金持ち優遇税制と批判も出ていますが、個人的には直接税から間接税重視に向かうべきだと思っているので(その方が世代間の公平は保てるはず)、消費課税の改革の中で炭素税も考えてもらいたいと思います。
この不況の時代、税収中立でないと新税の導入は難しいでしょう。まずエネルギー税制の改正、そして税収中立での炭素税の導入とすべきでしょう。