経済的インセンティブ

No.9   炭素税〜導入すべし〜  2002・9・10

   エネルギー税制とか道路特定財源の硬直性、族議員というテイコーー勢力、税制改正の難しさ、炭素税の不確実性・・・知れば知るほど、炭素税を導入して地球温暖化防止なんて無理なんじゃないかと弱気になってきます。

 総量規制である排出権取引の方が効果的でないか等々、迷いもあったのですが、いまは、どういう形であれ炭素税の導入(=エネルギー税制の改正)なくして、温暖化防止、エネルギー構造の変革はできないという確信しています。

 政府の温暖化対策推進大綱を超簡素化していうと、原子力を増設し、化石燃料は炭素含有量の多い石炭→石油→天然ガスへと転換することによってエネルギー起源のCO2を減らすというものです。そして、それを2007年に予定されている電力自由化と同時に行おうというものです。CO2は排出しないが、初期投資の大きな原子力の新増設は短期的視点が重視されるなかでは難しくなるしょう。そのなかで安さを競うと、当然いちばん安い石炭(石炭は石油とちがって課税されていません)火力発電へと流れることでしょう。

 エネルギー政策と環境政策を両立させる必要があります。そのなかで大きなウェイトを占めるエネルギー転換部門、そして運輸部門の大部分をしめる自動車からのCO2排出量を削減しようとするなら、エネルギーの値段に差をつける必要があります。それには人為的に価格差をつける炭素税しかありません。

 実際の炭素税は税金なので、課税するためには、○○税法を改正して炭素税に改編するか、炭素税法を新設して導入するか、道は2つだけです。

 こんな不況のなかでは新税は難しい。じゃ、既存税を炭素税に改編できるかってことになります。炭素税は炭素含有量に応じて課税する税金です。炭素を一番多く含むのは石炭、ついで石油、化石燃料のなかでは(比較的)クリーンなのが天然ガスという順番です。

 つい最近、国内の炭坑は全て閉鎖されました。石炭は保護産業なので石炭に課税できるか、というのが論点のひとつでしたがこれからは輸入炭のみを考えればいいので、石炭を例外にする必要はなくなります。一次エネルギーの17%くらいは石炭ですので、当然課税対象とすべきでしょう。

 石油は税金の固まりです。いまガソリンは1g100円前後ですが、ガソリン税だけで53.8円、その他原油等関税が0.215円、石油税2.04円、そのうえ消費税(これらの税金を含めた値段に消費税を課税することをタックス・オン・タックスといいます。税金に消費税をかけるのは変です。ビールも同じです)が課税されているので70%くらいは税金でしょう。

 環境省は2002年6月に、2005年をめどに温暖化対策税導入スケジュールを示しました。 これは新税としての炭素税ではなく、ガソリン税などを環境税へと改編していく方法です。 ガソリン税や軽油引取税は本来の税率の倍近い暫定税率になっています。これを本来の税率にもどして、暫定税率分を炭素含有量に応じた炭素税へ変えていこうというのが骨子です。あくまで税収中立のなかで導入ということになります。

 でもこれらのエネルギー関連税は複雑な流れをへて、悪名高き「道路特定財源」(総額5兆8547億円:2001年度予算)になっています。ですから、炭素税へと改編するには道路族議員のテイコーを振り切る必要があります。

 炭素税というと個別従量税で、税制改革の本流ではないように思われていますが、グリーン税制改革は環境保全型行財政改革につながるものだと思います。

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