研究会・講演会備忘録−印象に残ったひとこと−

No.22  第18回豊島原論〜カナダ・ノバスコシア州の廃棄物政策〜  2003・12・13

 今年もあと少し。世界的には戦争一色の年。日本的には規制緩和腰砕けの年(のよう な気がします)でした。
個人的にはバタバタで決めてアタフタと出かけたカナダ・ノバ スコア州の廃棄物政策を知ることをできたのが大きな収穫でした。

 市民団体「豊島は私たちの問題ネットワーク(豊島ネット)」では数年前から連続講座 豊島原論を開催しています。自分で講演するのは基本的に嫌いなのですが、このカナダ・ノバスコシア州の廃棄物政策について知ってもらいたくて第18回豊島原論の報告者になりました。

ツアーの様子をま とめたものはhttp://hiroko.s11.xrea.com/x/main/pieces_4.htm   です。

 

 ノバスコシア州のゴミ減量化作戦は、ローテク(人手を使って)によるコンポスト や紙・ペット類のリサイクル化を促すこと。そのための費用として容器類とタイヤの デポジット制度をRRFB(資源回収基金委員会)というNGOを通してシステム化してい ったことです。

 ノバスコシア・スタディツアーを企画された青山貞一さん(武蔵工業大学教授・環境 総合研究所長)の主張されていることは以下の点です。

@地方分権(国はなかなか変わらないので、地方から変える方が簡単)
A主体性(デポジットやスチュワードシップなど自主的に奉仕の精神をもってやる)
B有限性の認識(発生抑制を前提とする。廃棄物は資源である)
C立法措置(行政裁量から脱却し、法的枠組み・法的担保を作っていく必要がある)
D財政措置(国からの補助金をあてにしない。民間でできることは民間でやる)

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これらのうちCとDについて私見・私案を少し〜。 「風は地方から」「地方に風が吹いている」というのは確かです。強力なリーダーシッ プが必要ですが、地方から変えるような条例の制定や財政措置を講ずることは可能です。 かつては、機関委任事務という名前の国の仕事の代行業が地方自治体の仕事の7 割を占めていましたが、地方分権一括法によって法定受託事務にかわりました。

 機関委任事務については条例を制定することはできませんでした。ところが、「法定 受託義務」は条例制定が可能なのです。

 ちょっと堅くなりますが(^^;)、憲法94条には「地方公共団体は法律の範囲内で条例 を制定することができる」と明記されています。これを受けた地方自治法第14条1項 は「法令に反しない限りにおいて条例を制定できる」としています。

 では、環境に関して国の法律より厳しい条例を作ることができるか、となるとそう簡 単ではありません。国の法律と目的が同じでも、その対象・事項が異なる場合、横だ し条例(法律の枠外で条例による規定を行う)の制定は可能ですが、上乗せ条例 (法律の規制の枠内で規定基準を強化する)はできないこととなっていたのです。

 ただ、60年代の公害問題を通じて「法律は全国的な最低基準」(ナショナル・ミニマ ム論)が主張されはじめ、上乗せが許されるという見解が多くなっています。  

 ですから、「発生抑制」を実現するための手段として、@廃棄物の広域処理を認め ない、Aサーマルリサイクルを認めないという「条例」を「廃棄物処理法」や「自動 車リサイクル法」に抵触しないで制定することも可能なのです(ただし、かなり研究 しないと難しい)。

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一方、財源についても「地方税法」が改正されて「法定外普通税」、「法定外目的 税」を制定することが以前より容易になりました。

  現在税金のうち7割が国税、3割が地方税です。実際の仕事は国が3割、地方が7割 ですから、税源の地方への移譲は必要なことです。

  この点でも既得権の壁が厚く、来年度改正案での税源移譲はまだまだですが、ゆくゆ くは地方の自主財源が増えていくと思います。 地方議会は「地方の立法府」、県や市は「地方の行政府」です。国レベルよりわれわ れの暮らしに密着しています。権限や財源を移譲し、アメリカやカナダの連邦レベル とはいかなくても、もっともっと地方分権を進めるべきでしょう。

 
   <ノバスコシアにいった30人のメンバー>(今となっては懐かしい) 

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